日本とタイの不動産税比較:タイ人買主の実負担
保有税、取得費用、譲渡課税、外国人の所有権について、日本とタイの制度を並べて整理した実務ガイド。
タイの買主が日本の不動産を検討する際、ほぼ必ず持ち込まれる前提があります。「住宅を保有し続けるコストはほとんどかからない」という前提です。タイでは自己居住用の一次取得住宅について、土地建物税の課税標準5,000万バーツまでが非課税とされるため、多くの所有者は毎年の保有税を一切負担していません。一方の日本では、すべての所有者が固定資産税を評価額の1.4%、加えて都市計画税を最大0.3%、毎年負担します。タイのような包括的な非課税枠は存在しません。
もう一方の差は逆向きに働き、これが日本を検討する価値の中心にあります。外国籍の個人が、自己名義で日本の土地を完全な所有権として取得できることです。持分枠もノミニー構造も不要です。タイでは1954年土地法により外国人の土地所有は認められず、区分所有建物法により外国人の保有は当該建物の販売面積の49%までに制限されます。
本ガイドは両国の制度を並べて整理します。取得時に何を払うか、保有中に毎年何を払うか、売却時に何を払うか、そして実際に何を所有できるのか。タイ人投資家に対応する仲介業者にとっては、初回面談で誤解を解いておくべき論点がそのまま並んでいます。
所有できるもの
日本では土地・建物の所有について国籍による制限がありません。所有権は登記簿に本人名義で登記され、所有権付き土地、戸建て、区分所有マンションのいずれも、日本人の買主と同じ条件で外国人が取得できます。在留資格の有無はこれに影響しません。
タイでは、外国人買主は区分所有建物法第19条の2に基づく外国人枠49%の範囲内の区分所有物件、または賃借権による取得に限られます。土地の所有は土地法により閉ざされています。
毎年かかる税
日本は2つの保有税を課します。いずれも課税標準は固定資産税評価額であり、土地では市場価格のおおむね60%から70%です。
- **固定資産税:**評価額の1.4%。用途や所有者を問わず、すべての物件に毎年課税されます。
- **都市計画税:**市街化区域において、評価額の最大0.3%が上乗せされます。
- **軽減措置:**住宅用地は一戸あたり200平方メートルまで評価額6分の1、それを超える部分は3分の1に軽減されます。一次取得であることを理由とする非課税枠はありません。
タイは土地建物税の一本立てで、課税標準は財務省財産局が定める評価額、税率は用途によって決まります。
- **自己居住の一次取得住宅:**土地建物いずれも所有する場合は5,000万バーツまで、建物のみ所有の場合は1,000万バーツまで非課税。超過部分は0.03%から0.1%。
- **二戸目以降:**1バーツ目から0.02%、1億バーツ超で0.1%まで上昇。非課税枠なし。
- **事業用その他の用途:**評価額帯に応じて0.3%から0.7%。
- **遊休地:**0.3%から0.7%に加え、放置3年ごとに0.3%が加算され、上限は3%。
押さえるべき数字は二戸目の差です。日本のおよそ1.4%に対してタイは0.02%、いずれも市場価格ではなく評価額ベースです。日本の住宅用地の軽減措置は自己居住の小規模宅地であれば負担をかなり圧縮しますが、この差を消すには至りません。
取得時にかかる税
日本では、住宅用の土地建物について不動産取得税が評価額の3%(法定税率は4%、現在は軽減措置により3%)、これに登録免許税と印紙税が加わります。注意点として、不動産取得税は登記の数か月後に都道府県から課税され、決済時には徴収されません。
タイでは、土地局評価額に対する移転手数料2%(慣行上は売主と買主で折半、ただし交渉可能)、加えて特定事業税3.3%または印紙税0.5%のいずれか、さらに売主側の源泉徴収税がかかります。
売却時にかかる税
日本は譲渡益に課税し、保有期間の影響が想定以上に大きくなります。
- 保有5年以下:39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
- 保有5年超:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
タイは譲渡益ではなく取引に課税します。取得から5年以内の売却であれば特定事業税3.3%、それ以外は印紙税0.5%、加えて評価額と保有年数に応じた累進計算による源泉徴収税がかかります。
- 「保有税はかからない」という前提を日本に持ち込ませない。 初年度から保有税を予算に組み込む必要があります。10年保有を前提とする物件では、固定資産税と都市計画税の累計は総コストの無視できない割合を占め、収益の有無にかかわらず課税されます。
- 1.4%は評価額に対する税率であり、購入価格に対するものではない。 固定資産税評価額は市町村が決定し3年ごとに評価替えされます。土地では市場価格の60%から70%程度が一般的です。購入価格に1.4%を乗じると税負担を過大に見積もることになります。
- 日本の5年の判定は売却年の1月1日時点で行う。取得日からの応当日ではない。 2021年3月に取得し2026年6月に売却した物件は、暦の上では5年を超えて保有しているように見えますが、2026年1月1日時点の保有期間は4年10か月であり、短期譲渡として39.63%が適用されます。20.315%との差はおよそ20ポイントに達します。買主・売主双方への説明が必要な論点です。
- 日本に居住しない所有者には納税管理人の届出を促す。 市町村および都道府県からの納税通知書は日本国内の住所に送付されます。日本国内で受領・納付する代理人がいなければ通知は返戻され、完済したはずの物件に滞納が積み上がります。
- 不動産取得税の通知は遅れて届く。 登記から数か月後に都道府県から送付されるため、その時点で買主が予算を締めていることが少なくありません。自己居住用住宅の軽減措置には申告期限があります。
- 評価証明の請求前に必ず筆界を特定する。 日本の課税台帳は地番に紐づいており、住居表示とは異なります。誤った地番で請求すれば、当該物件のものではない評価額が返ってきます。
両制度を突き合わせる際の情報源とツール:
- 前年度の固定資産税納税通知書が日本側で最も有用なデューデリジェンス資料です。売主に依頼してください。評価額と実際の課税額の双方が記載されており、保有コストの見積もりから推測を排除できます。
- Japan Property Research は住所から地番を特定し、正しい評価証明を請求するために利用できます。あわせて市区町村別の価格マップでは、公的な取引データに基づく成約価格中央値、平方メートル単価、3年変化率を確認できます。
- 国税庁は譲渡所得の取扱いと保有期間の判定について、市町村の固定資産税課は評価証明および評価方法に関する照会について、それぞれ一次情報源となります。
- タイ側については2019年土地建物税法、およびタイ歳入局とタイ土地局が現行税率と移転費用の根拠となります。
- 賃料収入や事業用途が関わる場合、とりわけ非居住者所有の場合は、税理士の関与が必要です。非居住者には賃料に対する源泉徴収と年次申告義務の双方が生じます。
意思決定の前に揃えるべきもの:評価額、前年度納税通知書、不動産取得税の見積もり、想定保有期間と5年基準の突き合わせ、そして日本に居住しない場合は納税管理人の指定です。
よくある質問
タイ国籍の個人は日本の土地を所有できますか。 できます。自己名義で完全な所有権として取得可能です。日本は土地・建物の所有について国籍による制限を設けておらず、持分枠もありません。土地法により外国人の土地所有が全面的に禁じられ、区分所有物件も建物の販売面積の49%までに制限されるタイとの、実質的な差はここにあります。
日本の不動産税はタイより高いのですか。 毎年の保有税については、多くの場合明確に高くなります。タイは自己居住用の一次取得住宅について5,000万バーツまでを非課税とするため、保有税を一切負担しない所有者が多数を占めます。日本は評価額に対して1.4%に加え最大0.3%を課し、これに相当する非課税枠はありません。ただし住宅用地の軽減措置により土地部分の負担は大きく圧縮されます。取得時の費用については両国の差は比較的小さくなります。
両国で二重に課税されますか。 日本の不動産税および日本国内不動産の譲渡所得税は、居住地にかかわらず日本で課税されます。同一の所得がタイでも課税対象となるかは、タイの税務上の居住者判定と、タイ国内への送金額によって決まります。日タイ租税条約が二重課税の排除を定めています。この論点はガイドで結論を出すべきものではなく、両国の有資格専門家に確認すべき事項です。
日本の不動産を5年以内に売却した場合の税率は。 譲渡益に対して39.63%です。5年超保有の場合は20.315%となります。この5年は売却年の1月1日時点で判定されるため、取得日から起算した売主が想定を誤りやすい点です。
日本に居住していなくても不動産を所有できますか。 所有できます。ただし市町村および都道府県の納税通知書を受領・納付する納税管理人を日本国内に置く必要があります。出国前に届け出てください。
日本の不動産所有を確認
購入前に、その土地・建物の所有者を確認する
対象の土地・建物の登記事項証明書(登記簿)を Japan Property Research でオンライン取得すれば、登記上の所有者、権利関係、抵当権まで確認できます。登記は地番で請求するため、まず地図で対象地番を特定し、1通1,500円で申請してください。書類はメールで届き、アカウントにも保存されます。
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