日本の不動産が市街化調整区域にあるか確認する方法
都市計画法上の市街化調整区域とは何か、なぜ接道や用途地域に問題がなくても新築・建て替えができないことがあるのか、そして購入前にどう確認すればよいかを解説します。
接道や抵当権、登記名義とはまったく別の理由で、新築や建て替えができない土地があります。市街化調整区域 です。都市計画法上、この区域では新築はもちろん、既存の家を取り壊したうえでの建て替えも、原則として自由には認められません。接道は十分にあり、登記簿もきれいで、用途地域上も特に問題がない——それでも、この区域に指定されているというだけで、一般的な買主にとっては事実上「建てられない土地」になり得ます。
特に見落とされやすいのが、空き家や、周辺の市街地より明らかに安い田舎の土地です。今すでに人が住める家が建っていて価格も手頃だと、掘り出し物に見えてしまい、この制限のサインだとは気づきにくいものです。このガイドでは、市街化調整区域とは実際にどのような制限なのか、当サイトの他のガイドで扱っている接道義務や用途地域の問題とはどう違うのか、そして購入前にどう確認すればよいかを解説します。物件の登記簿など基礎的な確認方法をまだ読んでいない方は、まず 日本で不動産調査を進める方法 をご覧ください。
市街化調整区域とは何か
日本の都市計画法では、都道府県が都市計画区域内の土地を二つに分ける 区域区分 という手続きを行うことができます。一方は 市街化区域(積極的に市街化を進め、道路や上下水道といったインフラ整備を優先的に行う区域)、もう一方が 市街化調整区域(農地や森林、緑地をスプロール的な開発から守るため、市街化そのものを抑制すべき区域)です。すべての土地がこの区分の対象というわけではなく、地方の都市計画区域の中にはあえて区域区分を行っていない場所もありますし、そもそも都市計画区域の外にある土地はまた別の話で、より緩やかなルールが適用されます(市街化調整区域と同じ制限が名前を変えて適用されているわけではありません)。ある区画がどちらに該当するかは行政上の指定であり、今建っている家の様子や土地の見た目から推測できるものではありません。
なぜ新築や建て替えができないのか
市街化調整区域で計画がどちらの許可を必要とするかは、その計画が 開発行為(土地の造成や区画形質の変更を伴うもの)にあたるかどうかで決まります。開発行為にあたる計画には、都市計画法第29条にもとづく開発許可が必要です。市街化区域であれば一定規模以下の小規模な開発は許可不要となる例外がありますが、市街化調整区域にはそうした小規模免除がほとんどなく、小さな計画であっても許可の対象になります。一方、土地の造成を伴わない計画——すでに造成済みの土地にそのまま建物を建てるような場合——には、第29条の開発許可ではなく、これとは別に定められた第43条にもとづく建築許可が必要です。第43条は第29条の開発許可に上乗せされるものではなく、開発許可の対象にならない建築行為を受け持つ、いわば別ルートの許可です。いずれにせよ、既存の家を取り壊して新しい家を建てる、あるいは住宅を別の用途に転用するといった行為は、このどちらかの許可を必要とし、市街化区域であれば済む建築確認だけでは足りず、そもそも許可が下りるとは限らない性質のものになります。
それでも建てられる例外
ここで例外となる仕組みは二種類あり、どちらの話なのかを区別する必要があります。一つ目は、都市計画法第29条第1項、およびこれに対応する第43条第1項ただし書きで、特定の建物をそもそも許可の対象外とするものです。これは裁量による許可ではなく、許可制度の適用範囲そのものから外れるという扱いです。対象となるのは、農業・林業・漁業を実際に営む者がその土地で必要とする建物(その者自身の住宅を含む)、そして特定の公共施設・ライフライン関連の施設です。二つ目が第34条で、こちらは市街化調整区域内でもなお開発・建築を許可するかどうかを判断する基準を列挙しています。実務上よく出てくるのは、既存の住民にとって重要な、特定の入居者を前提とした住宅——例えば 分家住宅(もともとその地域に土地を持つ世帯の家族のために建てる住宅)——と、すでに市街地化している既存集落を対象とした基準(いわゆる「34条11号・12号」区域の基準)です。分家住宅のような、特定の入居者を前提に下りた許可は、土地そのものではなく人に紐づく性質のものとされ、これを 一身専属 と呼びます。つまり、その条件に当てはまらない別の買主が同じ土地を取得しても、同じ理由で建て替えができるとは限りません。既存集落の例外について、どの集落が対象になるか、どのような条件がつくかは自治体ごとの条例によって大きく異なります。
接道義務・用途地域との違い
市街化調整区域は、当サイトの他のガイドで扱っている建築可否の問題とは別の仕組みで、同じ土地でこれら三つが重なることはあっても、同じ問題ではありません。接道義務(接道要件、英語) は、市街化調整区域とはまったく関係のない、普通の市街化区域内の土地でも 再建築不可 を引き起こし得ます。用途地域 は、市街化区域内でどのような種類・規模の建物を建てられるかを定めるものです。市街化調整区域はこれらより手前の段階の話で、その区域がそもそも市街化を目指す区域なのかどうかという判断であり、個々の土地の接道状況や用途地域の指定とは関係なく決まっています。接道も用途地域もクリアしているように見える土地が、この区分だけを理由に建てられないことがあります。
トレードオフ:税金は安いが、融資や売却は難しくなりやすい
市街化調整区域はそもそも市街化を目指さない区域であるため、多くの自治体は 都市計画税 を課税していません。市街化区域内の土地・家屋に課税するのが原則で、地方税法上、条例により調整区域内にも例外的に課税できることにはなっていますが、原則は非課税です。固定資産税 の評価額についても、市街化調整区域の土地は近隣の市街化区域内の同等の土地と比べて低く評価される傾向があるとよく指摘されており、実務上は概ね3〜5割程度という数字が挙げられることが多いですが、正確な評価額は自治体ごとの評価方法によります。この保有コストの低さは、取引の別の場面で相殺されがちです。開発の余地が限られることから、金融機関が調整区域内の土地を担保として評価する際に慎重になりやすく、また同等条件の市街化区域内の土地と比べて売却時の流動性も低くなりやすい傾向があります。融資に頼る計画や、将来の売却を見込んでいる場合ほど、この点は重く効いてきます。
購入検討中の物件に入れ込む前に確認すべき、実務的な手順です。
- 地番を特定する。 住居表示だけに頼らず、対象区画の地番を確認します。地番・筆界マップ と 地番の調べ方ガイド を参考にしてください。
- 自治体の都市計画図を確認する。 「〇〇市(区町村) 都市計画図」でインターネット検索するか、国土交通省が公開している国土数値情報のGISデータを使い、対象区画が市街化調整区域か市街化区域かを確認します。地図の色分けや凡例は自治体ごとに異なるため、他の自治体の色使いを当てはめず、必ずその地図自体の凡例を確認してください。
- 地図だけで判断せず、自治体の都市計画課に確認する。 公開されている地図の境界線は区画の際で曖昧なことがあり、自治体によっては地図のデジタル化が粗い場合もあります。地番を用意したうえで都市計画課へ電話または窓口で問い合わせ、直接の回答を得てください。
- 調整区域だった場合、既存の家がどのような許可で建てられたかを確認する。 分家住宅のように特定の入居者を前提とした一身専属の許可で建てられたものかどうかを確認しましょう。これによって、別の買主であるあなたが同じ条件で建て替えられるかどうかが変わってきます。
- 既存集落としての例外に該当しないかを確認する。 自治体によっては、すでに市街地化している集落を区域内に指定し、条例で定めた条件のもとで空き地への建築を認めている場合があります。対象になるかどうかは、同じ都市計画課への確認事項です。
- 具体的な計画について、書面または記録に残る形で回答を得てから決める。 地図での確認は、より詳しく調べる価値があるかどうかを絞り込むための手段であり、自治体自身による、あなたの具体的な計画についての判断に代わるものではありません。
もっとも多い失敗は、今すでに人が住める家が建っているのだから、なくなった後も同じように建て替えられるはずだと思い込むことです。市街化調整区域の指定は家についてくるのではなく土地についているため、既存の建物が使われていること自体は、新しい建物が許可されるかどうかについて何も教えてくれません。もう一つよくある誤解は、接道が十分で相場より安い物件を見て、それだけで制限はないと判断してしまうことです。市街化調整区域の確認は接道や用途地域とはまったく別の確認事項であり、その二つに問題がないことは、この区分について何も保証しません。
登記事項証明書から分かること・分からないことです。
- 確実に分かること: 所有者、抵当権など権利関係、そして土地・建物の登記上の表示——他のどの物件の確認でも分かるのと同じ内容です。
- 分からないこと: その区画がそもそも市街化調整区域にあるかどうかです。区域区分は自治体の都市計画部局が管理する都市計画上の指定であり、登記簿に記録される事項ではありません。登記事項証明書がどれだけきれいでも、都市計画法上の建築可否については何も分かりません。
- 取得方法: Japan Property Research の 無料の地番検索ツール で対象区画を特定したうえで、土地の登記事項証明書を1,500円で取得してください。建物がある場合は、建物の登記事項証明書も別途1,500円で取得します。いずれもメールで届き、アカウントにも保存されるため、日本へ行かなくても司法書士や建築士と共有できます。ただし、登記事項証明書も無料の地番検索ツールも、上記の都市計画図での確認の代わりにはなりません。
だからといって、市街化調整区域内の物件が必ず悪い選択というわけではありません。静かで低密度な環境をあえて望み、建て替えの予定がない買主にとっては、評価額の低さがむしろ好都合な場合もあります。ただし、その土地について将来的に何ができて何ができないかが変わってくるため、購入検討中の物件に入れ込む前に知っておく価値はあります。日本の不動産デューデリジェンス チェックリスト では、この確認が所有者・接道・用途地域の確認とどう組み合わさるかを整理しています。
FAQ
市街化調整区域とはどういう意味ですか? 都市計画法上、市街化を抑制すべき区域として指定された区域という意味です。農地や森林、緑地をスプロール的な開発から守ることが目的で、市街化を進めるための区域ではありません。都道府県が行う都市計画上の指定であり、個々の土地の接道状況や用途地域の指定とは別に決まっています。
市街化調整区域内にある既存の家に住み続けることはできますか? 特定の入居者を前提とした条件が付いていない通常の住宅であれば、基本的には可能です。適法に建てられている家であれば、そのまま住み続けたり、通常の修繕を行ったりすることに問題はありません。ただし、分家住宅のように特定の入居者を前提とした一身専属の許可で建てられた家の場合、その条件は建物ではなく入居者本人に紐づいているため、同じ条件に当てはまらない買主がそのまま入居するには、建物に一切手を加えなくても、自治体の許可が別途必要になることがあります。購入前に、対象の家がどのような許可で建てられたものかを、仲介業者と自治体の都市計画課の双方に確認してください。これとは別に、制限が強く効いてくるのは新築や、取り壊したうえでの建て替えの場面で、こちらは計画の内容に応じて都市計画法第29条または第43条にもとづく許可が必要となり、その許可は容易には下りません。
これは再建築不可(接道義務の問題)と同じことですか? いいえ、結果としては似て見えることがありますが別の話です。再建築不可は建築基準法上の接道義務から生じるもので、ごく普通の市街化区域内の土地でも起こり得ます。市街化調整区域は都市計画法上の別の指定で、その区域がそもそも市街化を目指すかどうかという話であり、接道が十分にある土地であっても、この指定だけを理由に建てられないことがあります。接道義務の側面については、物件が再建築可能かを確認する方法(英語) をご覧ください。
登記事項証明書を見れば、その物件が市街化調整区域にあるかどうか分かりますか? 分かりません。登記事項証明書には所有者、抵当権、土地・建物の登記上の表示が記載されますが、区域区分は自治体の都市計画部局が管理する都市計画上の指定であり、登記簿には記録されません。
市街化調整区域内の土地は税金が安いのですか? 多くの場合そうです。市街化調整区域では都市計画税が課税されないのが原則で、固定資産税の評価額も同等の市街化区域内の土地より低く評価される傾向があるとよく指摘されています。ただし、その分、住宅ローンの担保としての評価が慎重になりやすく、売却時の流動性も低くなりやすい傾向があるため、税金の面だけでなく両方を見て判断する価値があります。
外国人でも市街化調整区域内の物件を購入できますか? はい。この区域指定に国籍や在留資格による制限はありません。実務上の論点は他の買主と同じで、意図した建築・建て替えができるかどうか、融資や将来の売却がイメージどおりに進むかどうかです。
関連ガイド:
- 福岡市:都市計画法第43条にもとづく建築許可の基準 — 福岡市
- 三重県:市街化調整区域内の建築制限(法第43条) — 三重県
- 伊豆の国市:市街化調整区域内における建築許可(都市計画法第43条第1項) — 伊豆の国市
- 東京都都市整備局:建築行為の制限(都市計画法第43条) — 東京都都市整備局
- 福岡市:開発許可の適用除外となる農林漁業用施設及び住宅の基準と解説(法第29条第1項第2号及び令第20条) — 福岡市
- 総務省:都市計画税の制度概要 — 総務省
補足:区域区分(市街化区域・市街化調整区域の指定)、第29条の開発許可とその第1項各号の適用除外、第34条にもとづく裁量的な許可基準、そして第43条の建築許可とこれに対応するただし書きの適用除外といった基本的な仕組みは、上記の各自治体・省庁の公式ページで共通して確認できる内容ですが、今回のセッションではネットワークの制約により、e-Gov法令検索や法務省自身の条文ページに直接アクセスすることができませんでした。そのため、条文の正確な文言そのものを確認したい場合は、e-Gov法令検索(elaws.e-gov.go.jp)を直接確認するか、司法書士・建築士、または自治体の都市計画課に照会してください。固定資産税評価額が市街化区域内の土地に比べて概ね3〜5割程度になるという数字や、住宅ローンの担保評価が慎重になりやすい・売却時の流動性が低くなりやすいという傾向は、特定の法令に定められた基準ではなく、実務上よく指摘される一般的な傾向であり、自治体や金融機関によって差があります。既存集落の例外(いわゆる「34条11号・12号」区域)に該当するかどうかや、分家住宅のような一身専属の許可が新しい買主にどこまで及ぶかは、自治体ごとの条例や個々の許可の内容によって決まる個別判断のため、実際に確認する際は自治体の都市計画課および司法書士・建築士に照会することをおすすめします。
日本の不動産所有を確認
購入前に、その土地・建物の所有者を確認する
対象の土地・建物の登記事項証明書(登記簿)を Japan Property Research でオンライン取得すれば、登記上の所有者、権利関係、抵当権まで確認できます。登記は地番で請求するため、まず地図で対象地番を特定し、1通1,500円で申請してください。書類はメールで届き、アカウントにも保存されます。
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